なぜ人は「手相の勉強をして」しまうのか

pre-neophilia2007-05-18

昨日は上野の東京文化会館チケットサービスにチケットとチラシを預けに行き、歩いて御徒町、用事を済ませて、そのまま歩いて秋葉原まで行ったのだった。何の目的もなく秋葉原まで歩いてきたのはまあ歩きたかったからという、いわゆるひとつのwalking for walkingであったので、そのまま駅改札へ向かったのだけど、そこで久々に手相を見せてほしいと言われたのだった。続けざま二人に声を掛けられた後、改札へ向かうも、Suicaの残金が足らずチャージ、再度改札に向かおうというところに男性が走り寄ってきてまた声を掛けてきた。都合三人。この昨日の三人に限らず、手相を見せてほしい人たちは必ず「手相の勉強をしている」と切り出す。
以前、もう3年ぐらい前だが、錦糸町で手相を見てもらったことがある。すみだトリフォニーホールでの演奏会の運営の仕事に向かうところで、そんなに暇でもなかったのだけど、この時も「今勉強中」なのだと聞いてまあじゃあちょっと、と手を差し出したのだった。「今年は転機の年」だということで、確かに東京に出てきてすぐだったので、まあそうですね、と話していたのだが、ただ「ここで乗り遅れるともう大変」らしいのだ。で、どうしたら良いのかというと「先生に見てもらいましょうよ」とこう来た。「先生」はとにかくものすごいらしくて、自分も救われたのだと言う。そのあたりですでに結構な時間手を見てもらっていたのでそろそろ行きますと言うと、とても残念そうで電話番号とか交換しませんかと言われたのだけど、また偶然お会い出来たら良いですねと言ってお別れしたのだった。
彼らは新宿とかに居るキャッチの人たちとは明らかに風貌、雰囲気が違う。服装も特に目立った感じではないし、雑踏の中に居ると周りの人たちと見分けが付かない。ふと目が合って、微笑まれて、あれ知り合いかなと思っていると唐突に「手相の勉強中」だと打ち明けられる。不思議なのが、大体において断られている彼らなのだけど、その顔にはそういったところから来る疲弊の表情がない。他人事ながらあまりやりたい仕事ではないなと思うのだけど、何がそこまで彼らを駆り立てているのだろうか。例えばお金がもらえる、のかもしれないけど、何というか商売っ気もあまり感じられない。押しはものすごく強いのだけど、うまいこと言ってだましこんでやろうという意気込みというよりは何だか真摯な情熱すら感じさせてしまう彼らなのだ。そして様々なシーン(まあ駅ですが)に登場する相当数の彼らにそれは一貫されているようで、一体そのネットワークはどのように構築されているのかがとても気になる。裏側に潜む「先生」的なものからはあまり健全なものを感じないのが正直なところだが、地道な活動を続ける彼らにはきな臭さがない。あの情熱を生み出すのが仮にお金ではないのだとしたら、それは何だろう。みんなも元々はどこかの駅前で勉強中の彼らに手相を見てもらったのだろうか。「勉強」を終えたその後には何が待っているのだろう。開業?ものすごくしのぎを削ることにならないか?
新宿へ向かって、フレッシュネスバーガー新宿御苑店へ。ビールを飲む。ここで飲むビールは美味い。夜風に当たりながらボーっとしていると気持ちが落ち着く。目の前は新宿通りで車もびゅんびゅん通っているのに不思議なものだ。店頭のバスケットに入っていたチラシにクラシックライブの告知が。そうです。またしてもフレッシュネスmeetsクラシック!

今回は弦楽四重奏です。店頭に屋台出現かも?だそうです。平日ですが新宿駅から徒歩10分ほど。春の夜のクラシックとハンバーガー。むしろ春の夜のクラシックダブルダブルバーガー。僕は手が届かなくて食べたことないですけどねダブルダブル。
また遡って16日は横浜市開港記念会館へ。ハムザ・エルディーン追悼コンサート。ハムザ・エルディーンという人はエジプトのアスワンハイダムに沈んだヌビアの村の出身で、アラブの弦楽器ウード、打楽器タールの演奏者。日本に十数年住んでいたこともあり、日本におけるアラブ音楽のあり方に大きな影響を持った人だそうだ。昨年5月死去。追悼コンサートの前に、池辺晋一郎さんと中村とうようさんのプレトークがあった。ご両人ともハムザさんと親交が深かったそうで、色々興味深いお話が聞けた。池辺さんがカイロのオペラハウス建設に関わってらしたのは初耳だった。エジプトにもしょっちゅう行っていたということで、僕も好んで吸っていたタバコ「クレオパトラ」も話の中に登場したりしてなつかしい思いに駆られる。トーク後、打楽器奏者の神尾弥さんと近くのBankARTへ行きコーヒーを飲む。ラ・フォル・ジュルネの事務局にもいたので、この間も少しご挨拶したのだが、ゆっくり話すのは初めてのこと。良い機会だった。また演奏を聴かせてほしいものだ。
追悼コンサートは豪華な面子の素晴らしい演奏が聴けた。本條秀太郎さんの声がすごくかっこよかった。声と言えばヴァイオリンの太田恵資さんがなんというのか合間にアラビアンヴォイスを入れるのだが、それがもう現地の演奏者としか思えない。エジプトで耳にしたあの声があった。吉見征樹さんのタブラも常味裕司さんのウードもクリスさんのパーカッションもものすごく良かった。きっとリハーサルはあまり出来なかったのではないかと予想するのだけど、一流の人が集まるとこんなことが出来るのだなと思った。幸いにも6月24日のNeophiliaClassical#3のチラシをプログラムに挟み込ませていただけた。こういうところに足を運ぶ人がウチのクラシックも聴きに来てくれると良いなと思う。