信州に行ったり。

pre-neophilia2009-09-15

信州に行ったりもしていたのだった。
「信州に行こう」という漠然とした提案により奥さんと母と妹夫婦と母の友達と奥志賀高原に行ったのは8月15日のことだ。
ただただ酒を飲んでのんびりしていたら良いのだろうと思っていたら、奥さんにホテル内の「森の音楽堂」に連れていかれ、そこでリハーサルをしている小澤征爾を目にしたのだった。いわゆるドッキリ的なサプライズ企画であったのだが、音楽堂のすぐ外、50メートルほど離れた石段に腰を下ろしてリハーサル風景を眺め、ぼんやりと小澤征爾の動きと音を観察していると、その中に入り込みたい気持ちがムクムクと立ち上がる。なぜクラシックでなくてはならないのか分からないし、実際のところクラシックでなくてはならないのかという点については繰り返し自問するところでもあるのだけど、やはりそれは恐らくクラシックでなくてはならず、そのなぜだか分からないところもまたクラシックでなくてはならない一つの理由ではないかと思う。演奏会は現地のワークショップに参加した学生さんたちの演奏だったが、内容は素晴らしかった。そんななか小澤征爾が弦楽オーケストラを指揮したチャイコフスキーのセレナーデの演奏、第3楽章でちょっとしたハプニングがあった。一番後列で演奏していたチェロの女の子が突然座っていた椅子から倒れ意識を失ってしまったのだ。演奏は一時中断、その女の子は近くの病院に運ばれて行った。スタッフがぐるりと彼女を取り巻く中、少し離れたところに「うろたえる小澤征爾」が立っていた。見たことが無い風景だったけど、そりゃそんなこともあるんだろうなと思った。指揮棒が彼女を立ち上げることはない。ステージに立ち音楽とシンクロすることだけが人生じゃない。緊張による過呼吸が原因だろうとスタッフの人がアナウンスをし、その後第3楽章の初めから演奏は再開された。演奏会が終了した後、会場の外にジャンパーを着て(奥志賀は8月も肌寒い)現れた小澤征爾はくだけて良い感じだった。