エナン復帰

pre-neophilia2009-10-01

ジュスティーヌ・エナンが復帰するというニュースを山手線のモニターで見た。
家ではテレビも見ず新聞も読まないのでヤフーのトップニュースとこの山手線ニュースのみによって時事情報を仕入れていたものだけど、最近じゃあ自転車に乗り始めて電車に乗る事もほとんど無くなってしまった。エナン復帰のニュースを見たのは先日のことだがきっと雨の日だったんだろう。
8年前、2001年のウィンブルドンはイギリスの部屋にあった白黒テレビで見た。日本でウィンブルドンと言えば夜中にやってるものだったけど本国じゃもちろん昼間に見れる。夏休みに入ってすぐ、ちょうど日本の甲子園を見るような感覚だ。まだ明るいうちからビールを片手にベッドに転がってテニスを見るのはなかなかのもので、それまであまり興味を持っていなかった競技だったけどちょくちょく見ていた。その年の女子決勝がエナンとヴィーナス・ウィリアムズのマッチ。ヴィーナスなんて見るからに強そうでこりゃあかんなあと思ったけどエナン自身はあかんと思っている様子は無かった。ヴィーナスに比べたら子供みたいに小さくて格闘技で言えば二つぐらいランクが違うように見えるそのベルギーの若いプレイヤーは真っ直ぐに相手を見つめ1セット目を落とした後の2セット目を取り返した。面白い競技だなと思った。ボールはすごい早さで移動するものの、ゲームの行方はスピーディーに展開するわけではない。ポイントの間にゆっくりと時間が持たれる。1セット目の1ゲーム目を全くボールに触れられずに落としてしまったとしてもその後いくらでも取り返せる。試合全体の色合いは実に様々だ。拮抗する立ち上がりからあっけない幕引きに向かう試合もあれば、まさかのどんでん返しもあり、クライマックスへ向かってジワジワと盛り上がってくる試合もある。最後の盛り上がりだけを見ればそれで良いというものでもないのだ。長い交響曲の最終楽章ばかりを聴いていたのでは同じ感動は得られない。結末はそれまでの道筋を辿って来たからこそドラマチックなのだ。第9のように苦悩を突き抜けて歓喜に至るその経緯を楽しむのだ。さてこの決勝も大変面白い試合だった。優勝はヴィーナス。
翌年はウィンブルドンまで観戦に出掛けた。一晩野宿して並び、センターコートの最前列、アンパイアの向かいの席に座った。試合は奇しくもエナン、ヴィーナスの準決勝。やはりエナンには何があっても試合を投げないという強い決意のようなものが感じられる。そしてテニスでは本当に最後の最後まで何が起こるか分からない。どうなるのか分からないトッププレイヤーの試合をウィンブルドンセンターコートで見るというのは今思い返してもやはり特別な体験だった。この年もエナンはヴィーナスには勝てない。しかしその後世界ランキングトップまで上り詰め、そしてトップのまま引退してしまう。
エナン復帰のニュースを見て嬉しかった。エナンと言いユニコーンと言いみんな帰って来るなあ。